吉備データベースの特異性・有効性を如実に示した、昨年度の暁星国際学園での事例を紹介しましょう。
1.極端なレベル差のあった英語の授業
夏の前期補習の授業での事。宮崎から来ていたM君(中1)が質問してきました、「先生、最上級って何?」。「それ、もう少し後で教えるから待ってな。いまは習ったところを固めるのが先だ。」「もう全部終わった。待てない。今教えて!」
その時間は黒板を使った一斉指導の授業でなく、 吉備データベースを使った演習授業でした。
入学式当初に 【国語と算数のテスト】だけでクラス分けをした暁星国際学園の中1のクラスには、すでに暁星国際小学校で多少なりも英語を学習している一握りの内部生と、中学から入学したまったくの英語初心者の外部生とが交ざっていました。
ローマ字もろくにかけない子も何人かいました。文法は怪しいけれど十分なリスニング力のある帰国子女もいました。 野球で言うと、高校野球地区予選1回戦敗退チームの補欠の選手たちと1A,2Aの選手たち、そしてごく一握りのメジャー級の素質のある3Aの選手。これらの子たちが同じクラスで英語を1から同時に学ぶわけです。
中庸で、中をとって、真ん中のレベルで授業を進めたからといって、クラスの1人1人全員を満足させることができるはずはありません。できる子にはヒマ・退屈。まったくの初心者の子たちにはちんぷんかんぷんになるのは見えています。実に大変な状況でした。
2.極端なレベル差を、どう克服したか?
黒板を使って‘教える’ときには、NHKのラジオ講座のように、基本事項をおさえながらも、余裕のある子のために随所に発展的内容を補足として盛り込んでいく、という方法を使いました。(cf. 左図の『知る』『わかる』の段階)
普通だと、これほどの実力差があると、教える事以上に難しいのが‘演習’時間。しかし、 吉備データベースを使っている暁星国際での演習時間は、楽しくもあり、ことばは悪いですが‘ラク’で、しかも素晴らしいことに、通常だと考えられない数々の小さな『奇跡』が生まれる時間でした。(cf. 図の『行う』の段階)。
昨年度は、暁星国際学園では、中1のうちに英検3級(もしくは、それ以上)を取ろう!という目標を掲げていましたから、いちいち強制したり、宿題を出したりしなくても、生徒1人1人が自立的に英語学習に取り組んでいました。
冒頭の、宮崎出身のM君も然りです。彼もまた初心者のグループの1人でしたが、内部生上がりの一握りの英語アドバンス組に‘負けたくない’という思いを強く持っていました。
こちらが特別に何もせずとも、彼自身の中にある【力の欲求】が、前へ前へと彼を突き動かしていました。その結果が、「先生、最上級って何?」。「それ、もう少し後で教えるから待ってな。いまは習ったところを固めるのが先だ。」「もう全部終わった。待てない。今教えて!」 のやりとりになって現われてきていたのです。
3.自分のペースでできる新しい学習スタイル
このような‘自立学習’形式で 吉備データベースを有効に活用するためには、あらかじめ作られた体系的な『パック問題』と、個々の生徒が自分で進み具合と達成度をチェックできる『パック一覧表』が必要になります。
英検の各級の学習項目をたたき台にしながら、並行箇所の文法事項を学習できる『パック問題』を、朝日塾中学校での指導の時に作り、それが 吉備データベースの中に入っていましたので、暁星国際学園においても、それをそのまま授業に活用して使いました。ですから、ある子がまだ助動詞を学習中に、別の子が比較をしたり、関係代名詞を学習したりできるわけです。
そこにM君のような【力の欲求】の強い子が出てくると、授業がぐんぐん引っ張られていき、生徒によってシラバスが早め早めに書きかえられていくような状況でした。
校内暴力や生徒の無気力、不登校などで、悪いほうに悪いほうに授業が引っ張られていき、シラバスがシラバスどおりにいかない、間に合わない、というケースさえ起こってもおかしくないような時代に、その反対の事が起こっている! このような学校が、全国の他のどこかであるでしょうか? 私は、いまでも、この子たちと、このような事実を誇りに思っています。
4.結果
このような学習形式を取り入れた結果、昨年度の暁星国際学園・中学1年A組では、2学期の始まる頃には関係代名詞も一通り終わり、結果として、ローマ字からはじめた子たちの多くが中1のうちに英検3級(高校入試レベルの英語)に合格しました。準2級合格にまで到達した子たちもいました。もちろんアドバンスの子たちは2級合格です。 …残念ながら、英検3級に合格できなかった子も、ほとんど合否のボーダーラインに、あと僅か何点かのところまで取れていた事や、準1級を狙った子たちも、かなりボーダー近くの点数を取れていた事も、(彼らの名誉のために?)付加します。
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多忙を極め、しばらくblogから遠ざかっていました。継続的にご覧下さっていました方には大変申し訳ございませんでした。
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